おとなの発達障害

ADHDとは誰もが持つ不注意、多動性、衝動性傾向を生来過剰に持っている状態で、このために社会生活を行う上で重大な支障が生じ、本人や周囲の人が困ったなと感じるような状態を呈する状態のことをいいます。生来の脳神経発達のかたよりの一つです。その人の人間性の問題ではありません。
「かたづけられない女たち」という本で、一気に有名になりました。
また広汎性発達障害(自閉スペクトラム障害)はコミュニケーションが苦手であったり、コミュニケーションのやり方が独特であったり、こだわりが強かったりする障害です。
ADHDあるいは広汎性発達障害を単独で持つ人は少なく、配合の割合はいろいろですが、どちらの要素も併せ持つ人がほとんどです。

有病率は10パーセント程度、男性のほうがやや多いです。おとなの有病率は2.5%。成人になると衝動性が減り、不注意が問題の中心になるため逆に女性のほうが有病割合があがります。遺伝率は70-80パーセントです。成長に伴い症状の消褪が30%にみられます。

ADHDの症状には不注意と衝動性の二つの大きな柱があります。

〈不注意〉
・ケアレスミスが多い。細部を見逃したり、仕事の精度が高くないが、さぼっているわけではない。
・講義や会話、あるいは長い文章を読むことに、集中し続けることがむずかしい。
・他人からは上の空のように見える。
・すぐにわき道にそれるため、仕事を完遂することが難しい。
・連続する作業を順序良くやり遂げることがむずかしい。
・机の上は乱雑である。
・学業や宿題、レポート作成や書類を完成させるといった精神的努力の持続を要する課題になかなか取り組めない。
・なくしものが多い。:財布、鍵、書類、携帯電話など
・刺激の上書きがおこる。AをやっているときにBをやるように指示があると、Aのことを忘れてしまう。
・約束や予定を忘れる:用事、折り返しの電話をすること、会計をすること、約束したこと。

〈衝動性〉
・手足をそわそわ動かしたり、とんとんたたいたり、打ち鳴らしたり、椅子の上でもじもじしたりする。
・座っていることを求められる場面で、自分の席を離れてしまう。「トイレ」「いやちょっと」といって中座することが多い。
・不適切な状況で、小児の場合は走り回ったり、高いところに登ったりする。
・静かに遊ぶことができない。とにかくうるさい。その人が動いた後に騒音が残っている感じ。
・とにかく自分のことをしゃべりまくる。相手には口を挟む余地がない。
・一列になって順番を待つのが難しい。
・人の邪魔をする。相手の物を許可なく使い始める。他の人の行っていることに割って入る。

ゲームには集中できます。何故か? ゲームでは次々に新しい刺激が与えられるので、気をそらされることがないのです。
過集中というのもADHDにはよくみられます。

広汎性発達障害ではコミュニケーションの問題が社会生活上の障害となります。
・言いたいことをうまく表現できない。
・空気を読めない。そのことで暴走することもある。よく「不思議ちゃん」「天然」といわれる。
・感情のコントロールが苦手。機嫌には日によって波がある。上機嫌であったりとりつく島がなかったり。
・体調のコントロールも苦手。下痢や頭痛でいとも簡単に欠勤するので、会社では怠け者という評価をされてしまう。当日にならないと行けるかどうかわからない。本人にとっては下痢や頭痛がとても気になる病状なのです。そこがこだわりポイントであるともいえます。

こうしたADHDや広汎性発達症状の結果として、
・対人関係をうまく築けない
・学業上問題が生じる
・(いつも叱られているので)自己評価が低くなる
・一生懸命やってもうまくいかない。ずっと生き辛さを感じて生活してきた。
・家族が対応困難と感じる
といったものが起こりえます。

社会に出ていくにつれ生活の困難は著しくなります。
子どものころは守られた環境に生活しており、物事への責任はちいさいものであり、発達障害であることがそこまで大きく問題になりません。支配的・過保護な親御さんの場合はがっちり患者さんの面倒を見ることで発達障害の症状で困ることがないことも多いのです。しかし社会に出て、より複雑な環境にさらされ、責任感がまし、いろいろな負担をしなければならない状態になると、深刻な障害として、症状が顕在化してきます。
近年大人の発達障害が話題になっているのはこういう背景があるからです。
わざとやっているわけではないのに誤解されることが多く、生きていくのがなかなか辛いようです。

主婦ですと家事育児の段取りが悪い→虐待に至るケースもあります。
学業上でも問題はあり、高校生ですと、中退、退学処分、停学、留年の割合が健常児に比べて優位に高いです。
解雇される、頻繁な転職の割合も高いです。

生活上の問題としては、
・朝目覚めがよくない
・遅刻が多い。
・段取り悪い
・失言多い
・夜は夜更かし
・なくしものが多い
・交通違反や交通事故が多い
・異性関係の乱れ
・転職・解雇が多い
・酒やギャンブルにのめりこむ
・暴飲暴食
・クレーマーになる
・DV
・虐待
等が起こりえます。

発達障害的な状態が実はアドバンスもあるという場面もあります
注意困難→好きなことへの好奇心、探求心が活発である
衝動性→エネルギッシュ、ひらめきがある。
こだわる→こつこつ深く掘り下げていくことができる。研究者には必須の能力。

発達障害とくにADHDの原因は脳のドーパミン、ノルアドレナリンのシステムがうまく動いていないから、という仮説で説明されています。
このため、薬物療法によりドーパミン、ノルアドレナリンのシステムを整えることで病状は軽快していきます。

ストラテラはシナプス間隙のノルアドレナリン、ドーパミンの量を増やすことができるADHD治療薬です。服薬開始後4-6週間で効果が出てきます。
コンサータは持続時間が約8時間。今日は特別頑張りたい、というときに使うといいですね。

服薬した結果として、「いままで、みんながなんとなくできていたことが、一生懸命やらないとできなかったが、治療により自然にできるようになってきた」「なんとなく落ち着いて考えられるようになった」「自信がついてとらわれなくなった」「大人になってからでも治療するとよくなることがわかった」「生産性があがった」「対人面で落ち着いた」「気分が落ち込まなくなった」といった変化として現れてきます。人によって効果の現れ方は違いますが、生活しやすくなる感覚が出てきます。
ただし薬はもちろんすべてではありません。自分でも生活習慣を変える努力は必要です。

主な副作用は、気持ちが悪い、食欲不振、頭痛です。薬の量を減らしたり飲み方を工夫することで副作用は出にくくなります。数パーセントに体質的に副作用の出やすい人もいます。おかしいなとおもったら遠慮なく教えてください。
安全性ですが、ストラテラ、コンサータとも依存性、習慣性は少ないですが、突然服薬を中断するのはよくありません。まずはご相談ください。
薬は少量から始めます。ストラテラの場合、最高用量は120mgですが、少量でも劇的に症状が改善するケースがあります。
コンサータは18mgからはじめます。
副作用が出ても服用方法を工夫することで、薬が飲めることもありますのでまずはご相談ください。
効果が見られれば一年程度服薬していただいて、良い生活習慣が身についたら減薬します。

生活をしやすくするための工夫
・物の置き場所を決める
・ゴミをこまめに捨てる。
・洗い物を済ませて寝る。食器洗い機と衣類乾燥機は便利ですよ。寝る前にやっちゃいましょう。
・なくしそうなメモはとりあえず写メをとってしまいましょう。
・時間の余裕を持たせて行動する。
とにかくメモを取る。
・メモをとるのが苦手な場合、音声認識ソフトを使うのも一考です。録音のできるソフトでテキストに自動変換してくれるソフトがあります。変換は・多少甘いですが、意味はわかるので利用価値が高いです。アイフォンユーザーでしたらRecocoというアプリがおすすめです。
・スマホの時計やタイマーを駆使する
・鍵や財布は玄関に置いておく。
・チェックリストをつくる。
・作業は付箋で管理。順番は機動的に変える。常に優先順位を考えるようにする。
・上司にお伺いをたてることを躊躇しない。(←これすごく大事)わからないことはとりあえず質問する。
・衝動買いのある人はクレジットカードをもたないこと。
・治療効果は期待できるので、薬物療法を気長に続けること。

ご家族へ
ご家族も今まで大変だったことでしょう。これからは医師、心理士、職場の人などみんなで対応を考えてきましょう。
是非ひきつづきご本人のよき理解者・支援者になってください。
本人に言いたいこともたくさんあるかと思いますが、怠けているのではありません。本人への要求は控えめにお願いします。言いたいことの半分は我慢するようにしてください。責めすぎると本人の自尊心がますます低下してしまいます。
親御さんも人生を楽しみましょう。ご本人の症状に巻き込まれすぎては双方が倒れます。時には親御さんも遊びに出ましょう。双方ともに適度な距離感が大事です。

職場の方へ
ご本人の特性に合わせた職場配置をお願いいたします。
指示の仕方にも工夫が必要です。
指示は一つずつ簡単明瞭にお願いします。
口頭だけではなく文書で指示をしていただけると本人の作業精度が増します。
作業の進行状況は随時確認してあげてください。
締め切りの前に、あらかじめチェックする日を設けてあげてください。
できなかったことではなく、できたことをほめてください。叱責は逆効果になることが多いのです。
引き続きご本人のよき理解者・支援者になってください。

通院、服薬には大きな経済的負担が伴います。自立支援法の利用もご検討ください。
障害者枠での就労には障害者手帳を取得するとよいでしょう。

医院について

〒273-0005
船橋市本町7-5-14
カーサフェリーチェ1F

電話番号
047-422-3300
診療科目
精神科、心療内科
・発達障害
・うつ病
・パニック障害
・統合失調症
・その他(応相談)
地図

JR船橋駅北口から徒歩3分。東武デパートとヨーカドーの間の道を通り、突き当りを右に曲がったらすぐに当院のマークが目に入るでしょう。